喜平橋方面から小平団地を迂回し、回田道と枝分かれして東上する鈴木街道。その先で弓なりにカーブした辺りの両側には、日中でも薄暗い雑木林がひっそりと広がっています。

鈴木街道をはさんで南側は鈴木稲荷神社の社森で、北側は宝寿院の境内です。

どちらもかつて鈴木新田とよばれたこの付近一帯の開拓を手がけた貫井村(現小金井市)名主の鈴木利左衛門春昌が寺社の敷地として寄進。

幕府の経済立て直し策として、江戸・享保年間に始まった新田開拓で誕生した武蔵野新田の中でも、最大規模の鈴木新田の歴史が刻まれている鈴木稲荷神社と宝寿院を探訪してみました。
鈴木新田は現在の鈴木町1、2丁目と花小金井南町1〜3丁目
および御幸町(堀端鈴木)からなっていた。

お断り:寶壽院は画数が多いため新漢字を使っている部分もあります。

鈴木新田と鈴木稲荷神社
境内の説明板によると、武州多摩郡貫井村名主鈴木利 左衛門の発願によって 開拓された新田で、許可された のは享保9年(1724)5月のこと。

開発地は貫井村願場と呼ばれ、その地域は現在の鈴木町1〜2丁目と花小金井南町1〜3丁目、御幸町(堀端鈴木)で約2.96平方キロ。当時開拓された武蔵野新田82ヵ村で最大規模と言われている。

開発当事者の利左衛門は、新田内の約2万5,000平方メートルを境内地として寄進。本村貫井村の村社を同年9月に勧請したのが鈴木稲荷神社で、以来、鈴木新田の鎮守として今日に。

土蔵造り本殿外壁に施されている狐などの彫刻は明治初期のもので、田無村の左官新倉安左衛門の作。現在の社殿は昭和36年に屋根が葺き替えられ、昭和40年にも大改修された。

入植者先祖に植えられた3本の黒松の1本が境内にあり、平成9年小平市の天然記念物に指定されたが、マツノザイセンチュウにより枯れて同17年3月に地上2メートル辺りで伐られてしまって寂しくなった。
表参道が鈴木街道から奥まっているので、人影の少ない
境内だが、車椅子の母親とお参り来た母娘の姿も。




鈴木稲荷今昔を訪ねて
鈴木街道から用水脇に「こくぶんじ ふちゅう」と刻まれ、道標も兼ねていた石橋供養塔や馬頭観世音を目印に、回田中通りに直角に折れて南下すると、程なく2本の欅の巨木がデ〜ンと聳えている。

その欅の背後に赤鳥居が!こちらが鈴木稲荷神社の正面入口であった。かつては回田中通りが本筋で、今の鈴木街道は同稲荷神社と宝寿院の境内を貫通する形で後年につくられたそうだ。

参道は約50メートル。両側の並木も開拓以来300年近い貫禄を。境内には新田開拓を促した鈴木用水が流れ、稲倉魂命(うかのみたまのみこと)を初めとする産土神が祀られた本社の他、金刀比羅社、天神社、須賀社、白狐社、大六天社も祀られている。
境内に聳えていた黒松は
鈴木稲荷神社でひときわ高く聳え、象徴でもあった黒松は入植者の一人深谷勘兵衛が、
出身地深谷(埼玉県)から3本の松を持ってきて自分の屋敷内と海岸寺(現御幸町)と、
この神社境内に新田開発が成功するように祈願して植えられたとのこと。

その後、海岸寺の松は枯れ、深谷家の松も空洞化が進んで倒木の危険性から
昭和36年に伐採された。残る鈴木稲荷神社の一本は都内に現存する松の
中でも幹周り3.8メートルは11番目、樹高28.5メートルは4番目に位置す
る大木として平成9年3月に小平市の天然記念物の指定を受けた。
当時の推定樹齢は290年だった。

小川町1丁目の「竹内家の大ケヤキ」に続く2号目の指定だった。が、その後、
枯れて空洞化が進み、調査したところ俗に松食い虫(マツノザイセンチュウ)
による被害で、伝染の恐れも多いことから同神社が平成17年3月17〜18日
に伐採したそうである。
本殿の外壁彫刻
社殿奥の白壁土蔵造りの本殿の南北と西側の壁面に狐や
獅子の像が浮き彫りされている。金網でガードされている
ので目につきにくいが、明治初期に田無村の左官・新倉
安左衛門が伝承を題材に壁面に施したといわれている。

     
  
 

所在地:小平市鈴木町1丁目510番地

小平市の無形民族文化財に指定され、唯一の郷土芸能である
『鈴木ばやし』は鈴木新田入植者子孫の深谷定右衛門が村の若者
たちに健全な娯楽を広めるために弘化4年(1847)に始めたそうです。

江戸里神楽の囃子の一部を取り入れたもので、笛と太鼓3台と鉦から
なる五人囃子と、ひょっとこ・おかめ・獅子の踊りで演じられます。
演目は『おかめ・ひょっとこ』『屋台:獅子舞』『かまくら』の3種で、
昭和45年(1970)に無形民族文化財の指定を受けた当時から、
鈴木ばやし保存会で、子供たちへの指導練習会が開かれています。

現在メンバーは幼児から90代の高齢者まで約60人。そのうち小中高生が
40人前後も。毎週木曜日の午後5時半から、武蔵野神社の隣の練習場で
練習が続けられています。 
宝寿院へ

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2007年11月作成